アンズのつぶやき 138 【コインの厚み部分を歩く】

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【コインの厚み部分を歩く】
 
すっかり忘れていた、
子供の頃の記憶が、
セピア色の映像を伴って、
ふと蘇った。
 
私が
小学3年生だか4年生だかの頃、
家の門の木戸の鍵を
閉めてくるようにと
母が私に言いつけるのは、
毎晩、夜の9時頃だっただろうか。
 
玄関から門まで
飛び石の並ぶ10m程を
転ばないよう細心の注意を払って
門まで駆け出し、
鍵を掛けて、
とって帰るのが
私の役目だった。
 
私を怯えさせるには
充分な暗闇を前に、
息を止め、
玄関の薄明かりを背にして、
一心に門まで駆ける時の
心のあり様まで思い出された。
 
子供心に、勇気と覚悟をもって、
暗闇に飛び込む。
木戸の鍵を閉め、振り返る。
玄関の薄明かりが目に入る。
あとは、その光を目指せばいい。
行きに比べれば、帰りは楽勝。
一目散に玄関を目指し、
明るい家に戻る。
上がった息を整えておしまい。
 
こうしたかつての日常のひとこまが
今なぜ鮮明に思い出されるのか…。
 
ああ、私はあの時、
勇気と覚悟を持てば
暗闇に向かえる
という経験を得たのだ。
 
当時は、
余りありがたくない役目を
仰せつかるという体験としか
捉えられなかったし、
それは、無理からぬことだったわけだけれど、
60年近く経ち、
コインの厚み部分を歩くことが、
少しばかり
できるようになった今は、
かつての悲しい体験の持つ
表側が見える。
 
母が厳しく当たってくれたからこそ
私が自分のものとできた、
決して目には見えない、
それでいて、
人生を生きる上で不可欠な
勇気と覚悟。
 
物事には、
必ず裏もあれば表もある。
厚み部分を歩くと、
その両面が見えて面白い。
厚み部分を歩けるようになると、
二元を一元に統合でき、
どんどん自由になる。
そして、同時に愛に近づき、
やがて、小さな針の穴を通る。
 
亡き母には、
今、根こそぎの感謝を向けたい。
母に届くに違いない。
あなたのおかげで、
私は愛と自由が
表裏一体であることを知るにまで
至ることができました。
 
なんといっても、
人生は素晴らしい。
宇宙は完璧。

 

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